森里川湖をめぐるストーリー 2
[2024年6月11日]
ID:17373
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このコラムは、鈴鹿の森から始まり、森里川湖を通じて人と自然がつながっていることを感じていただくものです。
東近江市の森林の大半を占める鈴鹿の森は、1,800種もの植物が生育し、小型のヒミズ・ヤマネ・モモンガから大型のツキノワグマ・ニホンカモシカまでさまざまな哺乳類、翼を広げると二メートル近くにもなる空の王者イヌワシや森の王者クマタカの両種が生息する、極めて生物多様性に富む地域です。
鈴鹿の森がこれほど生物の多様性と豊かさを有する要因は、鈴鹿山脈が動植物の地理的分布の東日本と西日本の境界部に位置することに加え、日本海側気候と太平洋側気候の特徴を併せ持つこと、北部は石灰岩・中南部は花崗岩と異なる地質を有することにあります。さらに、標高が千メートル級の山稜が連なり、その間に深く曲がりくねった渓谷が入り込んでいるなど、急峻でさまざまな特色を持つ地形が網の目のように展開していることもあげられます。
そして、これらの特性以上に鈴鹿の森の多様性と豊かさという特徴を決定づけることとなったのは、実は、人々が森に関わってきたことに起因しています。
鈴鹿の森には古くから人々が暮らし、多様な自然環境を賢明にいかし、生活に不可欠な資源を持続的に利用してきました。こうした、森との関わりを継続してきたことに重要な意味があったのです。
今では、森と人との関わりが薄れ、手入れが行き届かなくなり、森の持つ潜在的な自然資源を利用しなくなったことが、現在の鈴鹿の森の荒廃を招いているとも言えます。
執筆:山﨑 亨(東近江市参与、アジア猛禽類ネットワーク会長)
間伐が適切に実施された森林