森里川湖をめぐるストーリー 12
[2024年7月23日]
ID:17858
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このコラムは、鈴鹿の森から始まり、森里川湖を通じて人と自然がつながっていることを感じていただくものです。
現代のように電気や水道、交通などのインフラが整う前の時代には、人々は身の回りにある自然の恵みを最大限に利用して生活していました。
鈴鹿の森をはじめとした山間部の集落では、畑で栽培した野菜、自生するキノコや山菜、川魚、獣肉などを食材として用います。山の中で手に入れることができる資源の種類には限りがありますが、米は平地の集落から入手したり、海や湖の魚などは行商人などから購入したりと、他地域との交流を行うことで豊かな暮らしが営まれていました。
かつての暮らしぶりをうかがい知ることができる行事として、君ヶ畑町の大皇器地祖神社で行われる「御供盛り」と呼ばれる正月の神事をご紹介します。正装して無言のまま神饌(供え物)を形づくるという厳粛な儀式で、円錐形に盛りつけた蒸米、古式の手順に沿って切り分けたフナズシやスルメなどを祭神に供えます。かつては湖北などの行商人から塩漬けのフナを購入し、神事の当番が1年がかりでフナズシを作ったといいます。
湖で泳いでいたフナが、遠く離れた山の祭神に供えられるまでの長いストーリーを想像してみてください。広い地域の中で繰り広げられる営みが、森里川湖でつながっていく様子を感じられるのではないでしょうか。
「御供盛り」神事(君ヶ畑町)